TSUKUBA TOMMOROW LABO

FEATURES2019.02.22

若きコミュニティメーカーが作る“可動産”という新しい価値|青木大和

「TSUKUBA TOMORROW LABO」とは、“世界のあした”を考え、実験・実行していくつくば市のプロジェクトです。第1回目は、新しい暮らし方になるかもしれないと話題のバンライフ(#VANLIFE)にフォーカス。自然と向き合い、テクノロジーを駆使し、バンライファーとともに快適なバンライフを実験します。

そこで、実験会場となる『つくばVAN泊』(2019年3月開催)にご参加いただくバンライファーさんをシリーズでご紹介。4人目は、来る「超移動社会」を見据えて“動く家(BUSHOUSE)”を制作中の青木大和さんにお話を伺いました。

 

 


 

キャンピングカーのある家に生まれて

バンとの出会いのきっかけは、父親です。我が家にはキャンピングカーがあって、小学生の頃から長期休暇となれば、キャンピングカーで出かけるのが当たり前でした。父は外資系企業に勤めていたこともあり、フレックスやリモート勤務が可能だったので長期休暇にとどまらず、よくふたりで国内旅行をしていましたね。
父が仕事をしている間、ひとりで訪れた町をぶらぶらしては、たまたま出会った人たちと話をして情報や果物などをもらったりしていました。父とのキャンピングカーの旅で僕のコミュニケーション能力は培われたのかもしれません(笑)。
中学生になってからは、東京に暮らしながらアルペンスキーをやっていたので、毎週金曜に学校が終わるとキャンピングカーでそのまま苗場などのスキー場に直行し、強化合宿に参加する日々。スキー場の駐車場で父とふたりで車中泊した中学時代を今も懐かしく思い出します。僕にとっては物心ついた頃からキャンピングカーは暮らしの一部だったんです。
そうやって小さい頃から移動生活や車中泊をしてきたおかげか、どこででも誰と一緒でも眠れますし、トイレや風呂(銭湯・温泉)を探してバンで移動することもあまり苦に感じません。そういうところはバンライファー向きの人間かもしれませんね。

 
 

“動く家(BUSHOUSE)”ができるまで

15歳の1年間、アメリカのウイスコンシン州に留学していたのですが、ホストファミリーの家がキャンピングカーと身近な暮らしでした。また、スクールバスの運転手をやっていたホストファザーからは、スクールバスを改装して暮らす人たちの写真をよく見せてもらい、15歳ながらに衝撃を受けまして……。大人になったら自分もこういう生活がしてみたい!と具体的に思い描くようになりました。
帰国してからも、ネットでバンライファーたちをチェックしていました。アメリカのメジャーリーガーがオフシーズンにフォルクスワーゲンのバンでサーフトリップを楽しむ記事を見つけた時に、留学していた2010年当時とは違い、バンライフはいまや誰もが楽しめるライフスタイルのひとつになったんだなと実感したんです。

そこで、仲間たちとバンを改装して“動く家(BUSHOUSE/バスハウス)”を作ろう!と思い立ちました。ただ、話はしていたものの、改装したいバンのサイズが約7mと大きいこともあり、資金調達や制作場所、設計者の確保など様々な壁にぶつかりました…。

機運を伺っていた1年前、渋谷にある実験場「100BANCH」にBUSHOUSEというプロジェクト名で入居し、100BANCHのオーナーであるパナソニックさん、ロフトワークさん、カフェカンパニーさんにもご支援をいただきながら2018年に記念すべき第1号が完成しました。

完成までの道のりは大変でした。国内にマイクロバスを改装している事例が少なく、具体的なアドバイスをもらえる人もいない中で、見切り発車で制作がスタート。人脈を駆使して設計や家具制作できる若きホープをなんとか集めて、僕たちが欲しいと思うものを同世代のメンバーで作ることができました。
今は2号車・3号車も製作中で、1号車は『仲間たちと一緒』に、2号車は『カップル』で、3号車は『和モダンの内装で訪日外国人が』と、それぞれ違う利用者をイメージしています。

 
 

快適に暮らせるバンライフでなければ意味がない

現在は、完成した1台目が試験運転中で、友人知人に限定して貸し出しています。見切り発車のスタートだったので、1号車はプロトタイプのバンとしてなにが必要でなにが不要か見極めるためにもいろんな人に使ってもらっています。

僕たちのバンはサイズが大きいので、空間の窮屈さはほとんど感じないはず。着替えや食事など住宅内にいるのとほぼ変わりない生活ができると思います。暖房器具を搭載していない分、断熱材はしっかり入れました。ただ夏の暑さを攻略するためには、ソーラーパネルを積んで空調設備を整えないといけないかなと思っています。

 

現在製作中の2台目からはシャワーも搭載予定です。オフグリッド水インフラ技術開発をしている「WOTA」のCOO前田瑶介さんにもプロジェクトに参加していただき、バンに搭載できるポータブルシャワーを一緒に開発しています。少ない水を循環利用し、畳んでしまえる省スペースのシャワーブースが搭載されたら、さらに快適なバンが誕生するでしょう。
バンライファーたちを悩ませる電気や水の問題をひとつひとつ解決しなければ、より多くの人が利用できるバンは作れません。我慢したり、自分たちさえよければいいというものではなく、多くの人によりよく使ってもらえるバンを世の中に提示したい!と強く思っています。そのためにも、コンセプト違いの3台のバンを使って仮説検証しているところです。

 
 

バンライフが世界の住宅インフラを変える

僕の会社の事業の1つが、「アオイエ」というコミュニティハウスの運営です。東京と京都に12棟ほど展開していて、120人くらいの若者が暮らしています。シェアハウスの運営もその一環ではありますが、常々不動産のあり方を変えていきたいと思っていました。まさにBUSHOUSEは、“未来は不動産から可動産にあり”というコンセプトで進めているプロジェクトになります。
世界を見たときに、住宅不足の問題は深刻で、さらに格差が広がれば広がるほど貧困層は屋根のない暮らしを強いられることになるかもしれません。また、建物自体はそれほどお金がかからないのに、地代が高くて家を買えない人や、人口集中の都市圏ではどんどん上がる家賃に家を借りられない若者も多くいます。東京やニューヨークで起きている住宅問題は、いずれアジアやアフリカにも拡がっていき、どんどん家を持てない若者が増える可能性があると感じています。
そんな未来を思うとき、1台100万円程度かそれ以下で作れる可動産(バン)があれば、若者たちが家を持って自由に移動しながら暮らせるのでは?と思うんです。「バンは世界の住宅インフラになれる」そのためにも、BUSHOUSEのプロジェクトでは、より安価に量産できる道を探っていきたい。台数が増えるほど安価にバンを買ったり、借りられるようになって「これなら十分に生活できる!」という認知度も高まるはず。来年2020年には、アジアとアフリカにバンを持ち込めるように活動していきたいですね。

また、僕たちの東京と京都のコミュニティハウスに2台ずつバスを置き、それぞれのシェアメイトたちが行ったり来たりできる未来も考えています。今まで点と点だったコミュニティの間を、バンがもうひとつのコミュニティとなって移動することで、点と点が線でつながり経済圏が広がるはず。バンにはコミュニティを移動させたり、創出させる可能性もあると実感しています。

 
 

モビリティが創る未来都市

僕たちもこの3〜4年の間、バンライフやモビリティに関するマーケティングを進めていますが、国内需要はまだまだこれからだと考えています。まだバンライフというマーケットが成熟しきっていない状況で、つくば市がバンライフに注目し取り組むという話を聞いて驚きました。未来に先駆けたプロジェクトである「つくばVAN泊」への参加に今からワクワクしています。

また、僕がつくば市に期待していることは、都市設計のなかにバンライファーやモビリティをしっかり構築し、IoTを埋め込むことで街づくりのデータを収集できるのでは?ということです。モビリティの動線を知ることで、人の流れを把握し、よりスムーズな街づくりが可能になります。すでにフィンランドのヘルシンキが成功例と言われていますが、都市開発にモビリティを活用することは世界ではスタンダードになりつつあると思います。まさに今年以降に言われる機会が増えるであろうMaaSの領域です。
“未来の実験場”と言われるつくば市は、多くの市区町村のなかでも唯一モビリティ活用の実験を行える自治体なのでは?と思うんです。全国に先駆けてモビリティ活用を行うことで、模倣する自治体が登場すれば過疎地域の老人タクシー通院問題などを解決できる可能性があります。
このようなモビリティ領域は、日本が世界に勝てる領域だと思っているので、ぜひつくば市とモビリティ事業者や周辺事業者のみなさんで明るい未来を作ってほしいと願っています。

 

 


 

青木大和

株式会社DADA 代表取締役CEO

 

15歳で単身渡米。ちょうどその折、オバマ政権が誕生。日本と米国の若者の社会参加・政治参加の差を肌で痛感する。帰国後の2012年、若者と政治を繋ぐNPO法人を立ち上げ、「高校生100人×国会議員」をはじめ、数多くのコンテンツを世に送り出す。慶應義塾大学在学中から、世界各地を巡り、所属するコミュニティが人のあり方を決めると気づき、2016年新しい形のコミュニティをデザインするコミュニティハウス「アオイエ」をオープン。2017年9月に法人化し、代表取締役就任。2018年より、これから訪れる「超移動社会」に向けて“ 不動産ではなく可動産 ”を掲げ、動く家の「バスハウス事業」を開始している。

 

DADA
BUSHOUSE | 100BANCH

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