TSUKUBA TOMMOROW LABO

FEATURES2019.01.15

動くスナックに“未来”を乗せて|貞末真吾(動くスナック アポロ号)

「TSUKUBA TOMORROW LABO」とは、“世界のあした”を考え、実験・実行していくつくば市のプロジェクトです。第1回目は、新しい暮らし方になるかもしれない話題のバンライフ(#VANLIFE)にフォーカス。自然と向き合い、テクノロジーを駆使し、バンライファーとともに快適なバンライフを実験します。

そこで、実験会場となる『つくばVAN泊』(2019年3月開催)にご参加いただくバンライファーさんをシリーズでご紹介。3人目は、九州・福岡市を拠点に世界初!?マイクロバスで「動くスナック アポロ号」の運営をしている貞末真吾さんにお話を伺いました。

 

 


 

「動く」×「スナック」って楽しそう!


僕は、福岡の街を楽しくするプロジェクトとして「泊まれる立ち飲み STAND BY ME」というホステルを運営しています。いつしか1階の立ち飲み店に来るお客さんたちから、「二次会に使えるスナックが近所にあればいいのになぁ」といわれることが増え、もう1店舗やってみようか?と考えるようになりました。立ち飲みのお客さんを車に乗せて、飲みながら歌いながら福岡の街をナイトクルージングできたら楽しいだろうなぁと思いついたのが、「動くスナック アポロ号」のきっかけです。

"泊まれる立ち飲み STAND BY ME"1階は立ち飲みの居酒屋。2階と3階はホステル。『泊まれる立ち飲み』をコンセプトに、人と人が出会い、関わり、体験し、感動する場を創りだしている

「動くスナック」をやってみようかな?といった日から、楽しそう! おもしろそう!と手を挙げてくれたボランティアメンバーによる「アポロ計画実行委員会」なるものが立ち上がり、メンバーのひとりが昭和45年式のレトロで愛らしいマイクロバスを探してきてくれて。このバンとこのメンバーならやれる!と決意しました。運営メンバーがみなボランティアということもあり、まずは1年間限定営業を条件に僕たちの“動く秘密基地”が誕生したんです。

 

アポロ号が人気者になった九州一周の旅


アポロ号の運転には中型免許が必要。そこで実行委員の中から、4名が中型免許を取得しました。まずは、お披露目と宣伝を兼ねて2018年3月に九州一周キャラバンをスタート。今ここにいるよ!とFacebookに投稿すると会うべき人や行くべきスポットの情報がどんどん返ってきて(笑)。そんなコメントを頼りに、おもしろそうな人に会って話して写真を撮ってを繰り返す日々。リレー形式で紹介してもらって、本当にたくさんの人に出会うことができました。今回『つくばVAN泊』に参加できるのも、このときに出会った誰かが繋いでくれたんだろうなと思います。

キャラバン中はスナック営業ができないので、バンを見て興味ある人が寄ってくると無料で乗せてあげたり、クルージングしてあげたりして。印象的だったのが、おどろくほどみんないい笑顔になるんですよね。子どもはもちろん、いい大人がバンに乗っただけで、子どもみたいないい笑顔になる。次第にSNSで話題になって、くまモンみたいに「アポロが来たぞ!」って歓迎されるようになって(笑)。バンでいろんな街に行くだけで、こんなに人が笑顔になるなら、このバンを使って福岡の街を盛り上げられるなと夢が確信に変わりました。

 

みんなが混ざり合う極小空間


現在、月の半分ほどを、いくつかの拠点で営業したり、イベントへ参上しています。2018年11月からは福岡PARCO(パルコ)さんのご厚意で物流の「搬入口」を借りて営業しています。毎晩20:00から24:00まで営業し、これまた当初よりご協力いただいている鳥飼八幡宮さんの敷地に戻ります。いろんな職業やバックグラウンドをもつ素人ママと運転手が日替わりで営業を担当。アポロ号の最大収容人数は14名。お客さんはひとり80分2,000円(パルコは60分2,000円)の飲み放題でバンに乗り込んでくる仕組みです。冬は未体験ですが、先日ブランケットを大量に買ったので膝にかけてみんなで集まれば、こたつみたいになるかなぁ(笑)。ぎゅっと身を寄せた縁でよき出会いが生まれるかもしれませんしね。

 

福岡は、東京など他都市から出張に来る人が多いので、お客さんは福岡在住者だけに限りません。見た目がおもしろいバンに、おもしろい人たちが集う動くスナックとして認知され、今ではバンを目がけて遠方から足を運んでくれる人や、出張のたびに新しいお客さんを連れて来てくれる人も増えました。なので、いつもいろんな職業や地方、年齢、性別の人たちで“がめ煮※”のようにごった返しています。
※福岡の郷土料理「筑前煮」。博多方言でいろいろなものを寄せ集めることを「がめくる」などと言う語に由来すると言われている(所説あります)

 

誰かがおなかがすいたといえば、近所のマクドナルドやコンビニから誰かがつまみを買ってきてバンに持ち込むのは日常茶飯事で。それをみんなでシェアしながらお酒を飲むんですけど、フライドポテトを食べているうちにケチャップとマスタードが混ざり合っていくのと同じように、バンの中のお客さんたちが次第に混ざり合っていく様子を眺めるのはとても幸せです。もともとごった煮状態の交流の場をつくりたかったのですが、アポロ号がそれを叶えてくれました。

 

おもしろい人たちを乗せていろんな街へ


僕自身、人から影響を受けやすい人間で(笑)。でも、人って出会う人で確実に変わると思うし、人生を変えてしまうことだってある。僕も子をもつ父親ですが、若い世代に対していつも思うのが、“おもしろい人間になれ!”ということ。じゃあ、おもしろい人間になるにはどうすればいいか?というと、おもしろい人間に会うしかないんですよね。おもしろい人が集まる場所があって、人に出会って刺激を受けて、自分のやりたいことを見つけたり、仲間を見つけたり。

 

アポロ号が、まさにおもしろい人たちの集合体になって、刺激を与えられる場所になれたらいいなあと思います。おもしろい人たちが掛け算になって、化学反応が起こって新しいなにかが生まれる。僕はそんな場づくりがしたいんです。声がかかれば、いつでもアポロ号におもしろい人を乗せて出向いて、その街を盛り上げる。そういうマインドは常に持っています。

 

「動くスナック」に見る未来の街づくり


実は、福岡市が取り組んでいる防災・減災を目指す防災都市構想「Popup Commons(ポップアップ・コモンズ)」に共感し、動くスナックをヒラメいたという経緯もあります。「Popup Commons」とは、被災したときにトレーラーハウスなどで移動して違う場所に支援拠点をつくるという構想で、それを実現するためにも、病院や食料品店、美容室など街に必要なさまざまな業種が“動く商業形態”(モビリティハウスやコンテナなど)を採ろうというもの。それなら僕はスナックをやろうということでアポロ号をスタートしました。

 

ただ、新しい発想の都市構想があるなかで、“動く商業形態”は条例や規制に縛られて実現できないことが多いのも事実。新しい暮らし方や働き方が叫ばれる今だからこそ、条例や規制も柔軟に変わってほしいと願っています。現状は規制により、停車した状態でのみ営業可能ですが、飲んで歌って街をクルージングできたら絶対に楽しいですもんね。

 

『つくばVAN泊』には、きっと想像もつかないような発想をもつ人たちがたくさん来るんだろうなあと思います。僕はバンで生活はしていませんが、そういう未来の話もたくさん聞けるんだろうなと思うと今から楽しみです。そしてなにより、こんな想像のつかない前例のないイベントをつくば市という行政が主導でやるっていうのが非常にかっこいいと思います。1回目が実現すれば、2回目はもっとスムーズに開催できると思うので、毎年どこかでバンライファー・サミットが開催できたらおもしろいですね。つくば市とバンライファーがつくる未来に期待しています。

 

 


 

貞末真吾

株式会社ブルースカイ 代表取締役/CEO(チーフ宴会オフィサー)

 

1974年、神奈川県鎌倉市生まれ。元メーカーズシャツ鎌倉株式会社 常務取締役。同社で採用人事および福岡・ニューヨーク出店プロジェクトに携わり、「自分の手が届くところに国際交流ができる場所をつくる」と決意。単身赴任の際に訪れた福岡に惚れ込み、2012年5月移住を決断。2013年に子ども向け写真館「Acestudio」(ほか2店舗)、2016年バンコクの唐揚げホステル「trica」、2017年6月泊まれる立ち飲み「STAND BY ME」をオープン。
2018年5月に、被災地域にも出向くマイクロバス型「動くスナックアポロ号」、6月に福岡PARCOに持ち込み自由なハイボールバー「タイムカード」のポップアップショップ、6店舗目となる「Acestudio」の鳥飼八幡宮別館2015年、7月には夕陽と海のアートスポット駐車場「#ジハングン」をそれぞれオープン。2018年12月には「タイムカード」の常設店もスタート。
「リスクを取る企画屋」として、宿泊事業・イベント事業・フォトスタジオ事業を軸に周辺サービスの拡充、人事・経営・地域活性コンサルティングなど幅広く活動中。趣味は大好きな仲間と騒ぐこと、旅、ファッション。
https://snack-apollo.com/
http://bluesky2012.com/

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