FEATURES2022.03.25
職人と学生が提案する‟石″の新しいカタチ|石匠の見世蔵プロジェクト
「TSUKUBA TOMORROW LABO」とは、“世界のあした”を考え、実験・実行していくつくば市のプロジェクト。
つくば市では、新型コロナウイルス感染症が日常生活にもたらした大きな変化に対し、独自のアイデアやテクノロジーを駆使した取り組みやチャレンジを積極的に導入・支援しています。コロナ収束の目途が立たない中、アイデアをカタチにして、With/Afterのコロナ社会に新しい価値やサービスを提供している、つくばの方々をシリーズでご紹介します。
今回は、石の文化や面白さを伝えるための石匠と筑波大学芸術系の学生による共同プロジェクト、「石匠の見世蔵プロジェクト」のメンバーの皆さんに話を伺いました。
職人と学生がつくりあげる新しいプロジェクト
茨城県西部の真壁や羽黒、稲田と連なる一帯は、古くから良質な御影石が採れる石材の産地として名高く、有史以前から人と石との深い関係が続いています。そんな茨城の地で、2003年に茨城県の石材業活性化事業から発生した「石匠の見世蔵プロジェクト」は、古より続く石との関わりを筑波大学芸術専門学群の学生により“新しいカタチを提案する”ことをミッションとして行われているプロジェクトです。
発足当初から参加している石匠の富田秀(いずみ)さんと相田正志(まさし)さんは「私たちの仕事のほとんどが墓石や灯籠づくり。日々伝統技術を磨いていますが、学生が石に対してどうアプローチするのかを楽しみに毎年プロジェクトに参加しています。職人では思いつかないような提案に頭を抱えながらも、話し合い、歩み寄り、ときには意見がぶつかることもありながらひとつの作品を作り上げる過程がとても刺激的。硬い石を柔らかく見せる方法を模索するなど、固定観念が覆る楽しみがあります」と魅力を語ります。
プロジェクトは、各メンバーが石を使った作品をイラストや図面などに起こして石匠さんにプレゼンテーションを実施します。石匠さんは自身のスキルや挑戦したい分野を元に、学生の作品プランをマッチング。学生と連絡を取り合い、打ち合わせをしながら作品を完成させます。
例年は、成果発表として学生が石匠さんと共に作り上げた作品を県内のイベントに展示したり、体験型作品やワークショップ、デモンストレーションなどで広く一般の方にも作品を見てもらったり触れてもらう機会を持っていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で集まる機会が減り、オンラインでの打ち合わせを持つことに。展示の機会が無くなり、作品発表の方法を模索する中オンラインでできるワークショップを企画しました。
その中のひとつ、特別な道具や技術が無くても、石を材料にDIY 感覚で作ることができる「石積み植栽」のオンラインワークショップを「つくば市オンライン文化芸術奨励事業」に応募し採択されました。
オンラインをきっかけに、多くの人に石に触れる機会を
「石積み植栽」を発案した大学院2年(環境デザイン)の伊藤梨沙さんは、「石はとても身近に存在するもの。今回企画した『石積み植栽』は、そんな身近な石を重ねていくことで植栽をつくるワークショップです。石はその辺に落ちていますし、ホームセンターなどでも手軽に手に入れることができます。改めて石に触れる機会をつくり、積んだり重ねたりすることで石の汎用性を意識してもらう機会を作りたかった」とそのコンセプトを話します。
同じくメンバーの最上さんと徐(じょ)さんは「オンラインは気軽にワークショップに参加するきっかけになるのでは。ぜひ多くの人に体験してほしいと思います」。と呼びかけています。「石積み植栽」のオンラインワークショップの映像は、「【つくば市公式】つくばアートチャンネル」にて公開中。
小石を積んでつくる!卓上の石積み植え込み【つくば市オンラインによる文化芸術奨励事業/ワークショップ動画制作部門】
石匠の見世蔵プロジェクト
茨城県の石材加工の匠たちと筑波大学の学生がコラボレーションするプロジェクト。太古から続く人と石との関係に、新しいカタチを提案することを目指して活動。