FEATURES2022.03.15
ロボットによる単純作業の自動化を日常に|樋口翔太
「TSUKUBA TOMORROW LABO」とは、“世界のあした”を考え、実験・実行していくつくば市のプロジェクト。
つくば市では、新型コロナウイルス感染症が日常生活にもたらした大きな変化に対し、独自のアイデアやテクノロジーを駆使した取り組みやチャレンジを積極的に導入・支援しています。コロナ収束の目途が立たない中、アイデアをカタチにして、With/Afterのコロナ社会に新しい価値やサービスを提供している、つくばの方々をシリーズでご紹介します。
今回は、「単純作業の置き換えに特化したロボット」の開発を行うCloser(クローサー)の樋口翔太さんにお話を伺いました。
超低コストで社会問題を解決する試みへ
近年の産業用ロボット業界でひとつのキーワードとなっている食品・医薬品・化粧品などのいわゆる「三品産業」。人手不足を解消するために作業の一部をまかなう産業用ロボットの潜在的需要が高いとされる分野ですが、導入費用が高額になることがオートメーション化が進まない原因のひとつとされています。
そんな状況の中、Closer(クローサー)は「単純作業の置き換えに特化したロボット」の開発を行い、従来のロボットアームの1/50という超低コストのロボットアーム開発を実現させました。令和2年度に行われたつくば市の「つくばSociety5.0社会実装トライアル支援事業」では、テーマが『With/Afterコロナの生活スタイル』ということで、これは自分たちのためのトライアルだとさえ思いました。ロボット化は人手不足の解消もありますが、何より人と人との接触の機会を減らします。これからの社会の重要な問題を同時に2つ解決することができるのです。
学生時代で得た経験をロボット開発に生かす
物心がついた頃から工作が好きで、ダンボールなどで工作をしてよく遊んでいました。小学5年生の時は、RoboCup(自律型ロボットの大会)の全国大会に初出場したのをきっかけに、同大会の世界大会優勝を目指して長岡工業高等専門学校電子制御工学科に進学。2017年には名古屋市で開催された20歳未満のジュニアリーグ世界大会で優勝しました。
RoboCupと並行して高専時代に取り組んだのがロボットアームを使った「トマトの自動収穫システム」の構築です。作業効率は良かったものの、高額な導入費用がネックになることを知りました。さらにアルバイトでは単純作業の苦痛を肌で感じ、ロボットの必要性をより実感し、スペックもコストもコンパクトでシンプルなロボットアームが無いなら自分で開発しようと思いました。
日常になじむ、非接触・非対面型の「Closer CAFÉ」
つくば市が運営するスタートアップパークで行われた実証実験では、ロボットアームでコーヒーを提供しています。電子マネーを使った注文アプリでメニュー画面からドリンクを選ぶと、ロボットアームが作動し抽出されたコーヒーを非接触、非対面で提供する「Closer CAFÉ」は来場者から好評で、「動きがスムーズで驚いた」「大がかりでないので場に溶け込んでいた」という感想が聞かれました。そのようなユーザーの生の声を、これからの開発に活かしていきたいです。
2030年には644万人の人手が不足するというデータ(2018年パーソル総合研究所、中央大学)があり、深刻化する人手不足の解消には自動化が急がれています。この実験を足がかりに“ロボットの街つくば”から単純作業の自動化が当たり前の世界を実現したいと考えています。
Closer代表 樋口 翔太
筑波大学大学院所属。長岡高専卒。小学生のときにロボット開発を始め、2017年にはRoboCup世界大会優勝、Asia-Pacific大会優勝を果たす。孫正義育英財団3期生。高専機構理事長特別表彰を2度受賞等。