TSUKUBA TOMMOROW LABO

FEATURES2022.03.14

拡張現実(AR)技術を利用したアプリで大地の「中身」を可視化|ジオ・ビュー

 

「TSUKUBA TOMORROW LABO」とは、“世界のあした”を考え、実験・実行していくつくば市のプロジェクト。
つくば市では、新型コロナウイルス感染症が日常生活にもたらした大きな変化に対し、独自のアイデアやテクノロジーを駆使した取り組みやチャレンジを積極的に導入・支援しています。
コロナ収束の目途が立たない中、アイデアをカタチにして、With/Afterのコロナ社会に新しい価値やサービスを提供している、つくばの方々をシリーズでご紹介します。
今回は、拡張現実(AR)を利用した地質体験アプリ「ジオ・ビュー」を開発した、産業技術総合研究所地質調査総合センター
地質情報研究部門の副部門長・宮地良典さんにお話を伺いました。


 

 

アプリから手軽に専門知識を得る

今回、地質調査総合センターは拡張現実(AR)技術を利用した地質体験アプリ「ジオ・ビュー」を開発しました。この「ジオ・ビュー」は、スマートフォンのカメラ機能に大地やそれに関連した地質情報を重ねて、大地の「中身」が見えるシステムとなっており、令和2年度つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業に採択されました。
日本ジオパークに認定されている筑波山地域を対象に試作したアプリは、専門家の解説が無くても筑波山地域の地質情報を得られるため、個人や少人数で使えるWith/Afterコロナの観光アイテムとして期待されています。

 

利用者のニーズを満たす挑戦

「研究者が見てほしい情報と、一般の方が見たいと思う情報を近づけたらこうなりました。」

地図やGPSを搭載するなど技術的な支援を受けながら試作を重ね、モニターを募ってニーズを調査。平面だった映像を立体化するなどブラッシュアップに3年を費やし、2021年2月に初めてモニターツアーを実施しました。

 

実際の風景にスマホをかざして

 

ツアーでは、始めにジオスポットのひとつである筑波山麓で筑波山全景の風景と地層情報を重ねて機能を確認。アプリを起動したスマートフォンの画面では、筑波山の山頂から裾野にかけて斑れい岩、花こう岩、土石流堆積物と連なっている様子が表示されるので山の『中身』が一目瞭然です。

筑波山梅林では、駐車場から梅林までの山林でも地層の様子を確認できます。梅林最上部の「展望四阿(あずまや)」から関東平野を一望する景色を覗くと、場所によって地層が異なる様が著明です。「筑波山梅林の特徴でもある散在する班れい岩の巨石は、度重なる土石流によるものです」

スマートフォン越しに山頂にある斑れい岩が中腹まで流れてきた様子が想像できるなど、実際に使用してみることで楽しみながら知識を深められる機能を実感できます。「まずはつくばエリアの方が見慣れている筑波山地域の景色そのものに地質を重ねて見てもらうことで、普段の生活ではあまり意識をしない『地質』に興味を持っていただきたいと思います」

With/Afterコロナ時代のつくば発の観光アイテムとして、実用化に向け残る課題に向き合っています。

産業技術総合研究所地質調査総合センター
「地質」を研究する国内のナショナルセンター。1882(明治15)年に前身の地質調査所の設立から140年となる歴史ある組織で、地質図などの国内の地質情報の整備や防災に係る地質調査・情報発信を行っているほか、海外の地質調査機関と連携してグローバルな課題にも取り組んでいる。公開施設として設置されている地質標本館は、国内最大級の地球科学専門のミュージアムとして幅広い年代に親しまれている。
産業技術総合研究所 地質調査総合センター

 

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