TSUKUBA TOMMOROW LABO

FEATURES2018.12.02

「都会でバンライフ」という選択肢|渡鳥ジョニー

(写真:奥はる奈)

「TSUKUBA TOMORROW LABO」とは、“世界のあした”を考え、実験・実行していくつくば市のプロジェクトです。第1回目は、新しい暮らし方になるかもしれない話題のバンライフ(#VANLIFE)にフォーカス。自然と向き合い、テクノロジーを駆使し、バンライファーとともに快適なバンライフを実験します。

そこで、実験会場となる『つくばVAN泊』(2019年3月開催)にご参加いただくバンライファーさんをシリーズでご紹介。今回は、東京・永田町のシェアオフィス+バンライフで暮らし方や働き方を実験している渡鳥ジョニーさんにお話を伺いました。

 


 

10年ぶりの東京が僕をバンライファーに変えた

デザインコンセプトは「New Nomads(ニュー・ノマド)」。バンに合うモダンなインテリアを厳選。(写真:奥はる奈)

シモンズのセミダブルがピッタリと壁収納に収まる。(写真:奥はる奈)

2018年4月から東京・永田町でバンライフをスタートしました。きっかけは、離婚です(笑)。札幌で奥さんと子どもと一緒に一軒家と畑のある生活を送っていましたが、離婚ですべてを失い東京へ。10年ぶりに再会した東京は、相変わらず家賃は高く、電車は満員で、理想のライフスタイルはお金で買うしかないんだなぁ……と、ふり出しに戻る気分になりました。

 

単身者になったから狭い部屋に住むか? でも、離婚するまで“暮らし方冒険家”としてずっと暮らし方を模索し活動をしてきたのにそれでいいのか?と自問自答する日々。そこで、自分の理想の暮らし方を考え直したとき、コーヒー、音楽、上質なベッド、この3つがあれば充分ということに気づきました。また、昔から気になっていたバンライファーたちの暮らしぶりをSNSで見かけることも増え、最小スペックを備えた箱に車輪が付いて、どこにでも移動できるなんて最高じゃん!とヒラメいてしまい(笑)。

 

さらに強く僕の背中を押したのが、10年の前の東京にはなかったモノ~シェアサービス~の存在です。オフィスやキッチンはシェアオフィスを、洗濯はランドリーサービスを、お風呂はジムを、ネットはスマホや電源カフェを利用すればいい。バンに搭載できないものは、すべてシェアして誰かを頼ってしまえばいい。これはイケる!と思いました。

 

決めてからは早かったですね。SNSを通じて、実際に東京でバンライフをしている人に出会い、運良く改装済みのベンツの中古バンを手に入れることができ、その1週間後には友人のつてで「Nagatacho GRID」の協力を得てシェアオフィスの駐車場を拠点にすることができました。晴れて、永田町で“マイホームはベンツ”という新しい暮らしが始まったのです。

 

都市型バンライフで街をハックする日々

話題のスマートコーヒーメーカーGINAで淹れるコーヒー。かさばるけどこれだけは譲れなかった(写真:奥はる奈)

出先でもテザリングで快適なソファでノマドワーク。電源はソーラー発電でOK(写真:奥はる奈)

永田町のシェアオフィス「みどり荘」にある「軒下パーキング」が僕の居場所になりました。毎朝8:30頃に通勤ラッシュの靴音をアラーム代わりに目覚め、バンを出てビル5階にあるみどり荘へ。通勤時間は、たったの徒歩10秒。シェアオフィスの利用者はクリエイターが多く、もちろんまだ誰も来ていません。朝日が差し込む広い空間で、お気に入りの音楽を聴きながら、大好きなコーヒーを優雅に飲むことで1日が始まります。

 

10:00を過ぎる頃、利用者たちが出社しはじめ、シェアオフィスは徐々ににぎやかに。僕の定位置は、キッチンがあるラウンジの一角。座り心地のいいソファにゆったり座りながら、ノートパソコンで仕事をスタート。夏は屋上テラスでハンモックに揺られて気分転換したり、キッチンで仕事仲間に手料理をふるまったり。打ち合わせやお風呂利用のジムには、自転車でサクッと移動。あとはバンに搭載した高級ベッドで眠るだけ。都心の単身マンション暮らしだったらこうはいかないだろうなと、東京をハックするようなバンライフを選んで正解でした。

 

日本で一番シェアを体感できるビルNagatacho GRID。キッチンやバー、屋上だってシェア。

バンの中で料理だってできる。冷蔵庫には冷えたビールが。(写真:奥はる奈)

バンライフといえば聞こえはいいですが、いってみれば“車上暮らし”。バツイチ、40歳目前、車上生活というワードが並ぶと、かなり悲壮感が漂いますよね(苦笑)。だからこそ、服装はもちろん、働き方や暮らし方のクオリティを上げることにこだわりたい。ベンツの中古車を選び、永田町のシェアオフィスを拠点にしたのもそのひとつで、最小スペックで最高のライフスタイルを確立したいと思っています。

 

甘いだけじゃない!酸いもあるバンライフの課題とは?

淡路島の岸壁で早朝釣りへ。思いつきで動けるのもバンライフの魅力(写真:奥はる奈)

六甲山の山頂でノマドワーク。アイスコーヒーを飲みながら。(写真:奥はる奈)

高級ベッドで悠々と。移動に疲れてもいつでも心地よい睡眠が。(写真:奥はる奈)

 

都市型バンライフを実験中ですが、オフの日には地方へ移動することも。都会と地方を自由に行き来できるバンライフではありますが、実は人生初のレッカーも経験しまして。しかも数えればもう4回も……。そもそも築35年の家(中古バン)を買ってしまったからなので次回は新車を買えばよいのですが、中古車だけが理由ではない問題も見えてきました。

 

1つ目は、エネルギーの問題。僕のバンにはバッテリーを2台搭載していますが、不安なく動き回れるかというとまだまだ不安です。すでに数日間持つくらいのバッテリーが開発されてはいますが、想像どおりの高額商品。下手すると、車の購入代金よりバッテリーが高くつくほど。バンライフにとってオフグリッドはマストな技術です。高性能な太陽光パネルと大容量のバッテリーがあれば、もっと自由に動き回って、車上オフィスとして難なく働くこともできるでしょう。

 

2つ目は、水の浄化問題。いまや地方の隅々までコンビニエンスストアなどがあるので飲料水の購入に困ることはありません。でも、未来の技術で自分が排出する水分(小便)を飲めるレベルまで浄化できたら、永久不滅に水不足に悩むことはありません。飲みたいか?飲みたくないか?は置いておいて(笑)、不安なく移動するためのひとつの手段としては必要な課題だと考えています。

 

3つ目は、廃棄物問題。自分が排出する個体(大便)もありますし、生ごみなどさまざまなゴミも排出します。これらをいちいちサービスエリアのトイレやゴミ箱に捨てるのか?という問題も……。廃棄物を数日で土に戻せるくらいに分解できたり、ニオイもなくとてもコンパクトに圧縮できたり、バンライファー専用のゴミステーションができたりすれば、自然と共存しながら、移動という自由を手に入れることができます。

 

未来を切り開く最先端技術をお持ちのつくば市のみなさん!ぜひご相談させてください(笑)。そして、僕は僕なりにバンライファーの拠点作りを進めるべく「LESSMORE Inc.」という会社を立ち上げました。世界中の絶景を借景に働く、温泉を渡り歩きながら暮らす、など自動運転やオフグリッドなどのテクノロジーで実現する「ありえない暮らし」を一緒に作っていけるパートナーを探しています。

 

バンライファー目線で考える未来の暮らし

LESSMORE Incでは、バッテリーや浄水器など、オフグリッド技術の協力パートナーを探している。

今回、つくば市さんから声をかけていただき、「つくばVAN泊」に参加します。何度かお話する機会があり、前述の3つの課題についても宇宙や防災というシーンではすでに実現している技術もあるとか。僕たちの日々の暮らしに登場する日もそう遠くないかもしれません。

 

また、つくばVAN泊では、エネルギーや水、トイレ問題などを攻略できる技術を持つ方々も参加されると聞きました。さまざまな企業や技術者、バンライファーの仲間と出会える絶好の機会と考えています。バンライフの楽しさを伝えながら、未来の暮らし方を考え変えていくひとりになれたら、と思っています。

 

暮らし方といえば、最近話題の“デュアルライフ(2拠点生活)”。僕としては、2ヵ所を管理するコストや所有物が2倍になることを考えるとデメリットもあるなと。その点、バンライフなら好きなものを詰め込んで移動できる。“東京か地方か”ではなく、“東京も地方も”無数の拠点で生活することが可能です。暑い夏は、軽井沢へ。寒い冬は、沖縄へ。明日の居場所くらい、自分で自由に決めてもいい。僕の名前のとおり、まさに“渡り鳥”のように日本を渡り歩きたいと思います。

 

この先、自動運転化が進み自動で移動できる時代がやって来たら、有史以来の大変化が訪れるはず。さらなる技術向上によって、ひとり1台自動運転のカーハウスを所有する時代がやって来るかもしれません。DJブースを搭載した音楽好きのカークラブや、ピザ窯を搭載した料理好きのキッチンカーなど個性豊かなバンライファーが集まって、さまざまな場所にヴィレッジを作る。カラフルで新しい未来の暮らしを一緒につくっていきませんか?

 

(写真:奥はる奈)

 


 

渡鳥ジョニー

ハイパー車上クリエイター / LESSMORE Inc.

 

2004年 慶應義塾大学環境情報学部卒。在学中にはじめたウェブ製作のスキルを活かして外資系広告代理店に就職。
2009年 Googleのキャンペーンボーイに抜擢され、体当たりの芸風で全国各地を旅しながら動画による食レポを行う(元祖YouTuber)
2010年、結婚を機に暮らしかた冒険家として活動開始、「結婚キャンプ」を広める。震災後は熊本に移住し、「古民家リノベ」や「高品質低空飛行生活」、「物技交換」など震災以降の暮らし方を模索。
2014年には坂本龍一ゲストディレクターに招聘され札幌国際芸術祭に出展。2018年、離婚を機に暮らしかた冒険家を脱退。ベースを東京に移し、都市型バンライフをはじめる。現在バンライフのメディアサイトを準備中。
http://vldk.life
http://lessmore.life
https://note.mu/jon_megane

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